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2008年 08月 30日

切ない思い

切ない思い_c0116787_7555076.jpg


数年前、実家の庭には一面のダリヤがあった。今の時期、いろんな形や色のダリヤが咲き乱れていたのを覚えている。

父が春に球根を植え、大切に育て、夏に咲かせ、雪が振る前に球根を掘り、仕分けして保管していた。

知らない通りすがりの方が車を止めて眺めていたり、近所の人が花を分けてほしいと言われたり、父の自慢だった。

お盆に数本切り、父の母のお墓に持って行くのが恒例。

父の母は、父が幼い頃に亡くなっている。その後、再婚し新しい母が出来たのだが...それは父にとって悲惨な生活の

始まりだった。まともに食べさせてもらう事も、面倒をみるどころか毎日いじめられていたらしい。

だから父は12歳で家を出て働き始めた。たったの12歳で。しかも誰にも助けられず1人で。

30歳まで懸命にお金を貯め、土地と家を一括で購入。その後、お見合いをして結婚した。

結婚式をあげる事になり、久しぶりに実家に報告と式への招待をした。

式当日、父の親族席は空席だった。母も悲しかった、と1度だけ話してくれた事がある。



もしかしたらダリヤは、父の産みの母が好きだった花かもしれない。

だから毎年、父はダリヤを持って母のお墓に行っていたのかもしれない。


数年前、父の父と新しい母が、引っ越した先に新しいお墓を建てる事になった。

その時に、こちらにある父の母のお骨も移動し、一緒に新しいお墓に入れると勝手に決め移してしまったのだ。

父は怒り返してほしいと何度もお願いしたが、あの意地悪な母は、面白がって断るのだ。未だに父を嫌いらしい。


それから父はダリヤを植えるのをやめた。

もちろん新しいお墓(実家から遠い)にも毎年行っている。でも、以前の古いお墓が父にとっては母だったのだ。



ダリヤを見ると、あの一面に咲き乱れていた庭を思い出す。

それと同時に父の思いを思うと、胸が苦しくなる。

だから、私にとってダリヤは切ない花、切ない思い、なのだ。

by tendon-gyudon | 2008-08-30 08:29 |


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